TCH(歯の接触癖)を改善し顎関節症の悪化を防ぎませんか
TCH(Tooth Contacting Habit)という「歯の接触癖」をご存知でしょうか?
上下の歯の接触は、通常は食事中や会話中などにおこなわれますが、TCHは接触の必要性がないときに「弱い噛みしめ」、「食いしばり」をおこなってしまいそれが癖になるというものです。
特にTCHは「緊張」、「集中」しているシーンで多く見られ、噛む力は弱いせいもあって本人に自覚がないまま“噛みしめ癖”がついてしまいます。例え弱い噛みしめであってもそれが毎日・長時間続くことにより、咀嚼筋や顎関節に大きな負担となり次第に違和感や痛みが伴うことがあります。TCHを保有する人の中には顎関節症を発症している人も少なくありません。夜間に歯ぎしりや噛みしめはしてないはずなのに「顎が痛い」、「口が開かない」、「頭痛がする」などの症状が見られる方は注意が必要です。
TCHはいわゆる“癖”ですので、その悪い癖を改善することにより顎関節症の発症や悪化を防いで症状が改善に向かうことがあります。
この記事では、「どのようにしてTCHになるのか?」、「TCHの改善方法」などについて解説しますので、ご自身に該当する項目がないかチェックしてはいかがでしょうか。
TCHとは?
歯列接触には、就寝中のクレンチング(噛みしめ)やグラインディング(歯ぎしり)、また日中の強いクレンチングなどがありますが、TCHはこれらの歯列接触とは区別されます。
TCHは日中の活動中に「弱い噛みしめを長時間おこなう癖」のことで、特に「緊張・集中する場面」、「うつむきがちな姿勢を長時間続けている時」、「1人で黙々と作業している時」などに無意識に噛みしめをおこなうケースが見られます。
また、TCHになる大きな原因の一つがストレスと言われており、顎関節症と同様に20代、30代の女性を中心にTCHを保有する人が多くいます。
TCHを持っている人の多くが無意識のまま「歯の接触」を続け、痛みが強くなってから当院のような顎関節症治療の専門クリニックに来院されます。
上下の歯の接触はいつ起こる?
人間の上下の歯が接触するタイミングは「会話中」、「咀嚼中(食べ物を細かくなるまで噛む」、「嚥下(食べ物、唾液などの飲み込む)」の3つのシーンで主におこなわれます。
上下の歯の間には約1mmから3mm程度のすき間がありますので、起きて活動している時には会話、咀嚼(そしゃく)、嚥下(えんか)をのぞき上下の歯の接触はほとんどありません。また、1日の間に上下の歯が接触する時間は約20分弱と言われています。
寝ている時にブラキシングやクレンチング、日中にクレンチングをしてしまう癖がある人がいますが、それは比較的短時間のものです。起きている時にしかも長時間歯を接触させ続けるというTCHは特殊な癖であることが分かります。
TCHになる生活シーン
ではTCHはどのようなときにやっているのでしょうか?それを紐解くカギが「ストレス社会」、「現代人の生活スタイル」にあります。
TCHは「緊張」、「集中」が必要なシーンでその癖がでることがあります。例えば「仕事や対人関係」、「家事(掃除、洗濯、料理)」や「車の運転中」、さらに「テレビゲーム」で集中して遊んでいるときなどにもTCHになると言われています。
また最近では、スマホやタブレットの利用により「長時間うつむきながら同じ姿勢を取る」場面が増えていますが、この姿勢が続くと歯の安静空域である隙間が減少し「上下の歯が接触しやすくなる」、「下顎に力がかかる」ことになり、結果的にTCHになりやすくなります。
特に1人で何かの作業に集中しているときなどは長時間同じ姿勢を取り続けることが多くTCHになりやすいと言われています。
【緊張を生むシーン】
- 商談、接客
- 上司との会話
【集中が必要なシーン】
- 家事(料理、掃除、洗濯)
- 車、バイク、自転車の運転
- 緻密な作業
- 勉強
【長時間うつむくシーン】
- パソコンの使用中
- スマホ使用中
- 携帯ゲーム中
- 読書中
TCHはストレスが原因?
顎関節症の原因の一つにストレスがありますがこれはTCHも同様です。緊張、集中をともなうシーンでは強いストレスを抱えながら何かをおこなっているケースが多く、また家事や作業中の時にもそれが積極的にやりたくないことだと思えばストレスに変わります。
ストレスを引き起こす物理的・精神的な因子をストレッサーと言いますが、ストレッサーには、仕事、環境、人間関係などによる「慢性的」なものから、家族の死亡、離婚、トラブルなど「急性的」なものがあります。
このストレッサーによって起こる身体的な反応をストレス反応と呼びますが、ストレス反応が起きると人間の体の筋肉は緊張し、心理的反応(不安、抑うつなど)、身体的反応(疲労、心身症など)、行動的反応(不登校、アルコール依存など)を引き起こすことになります。このストレス反応が顎口腔系と筋肉を緊張させてTCHになることが考えられます。
また、ストレスとの関係で言うと、ストレスに強くない「抑うつ」の症状がある人はTCHになりやすいとも言われています。
TCHによる顎関節症の発症
軽い歯の接触であってもそれが長時間・毎日続けば、歯とその周辺は大きな負担を受けて様々な症状が出ることがあります。「知覚過敏」や「歯の破折」など歯そのものがダメージを受けるような症状もありますが、より深刻なのが顎口腔系(頬、顔面筋、下顎、咀嚼筋、顎関節など)への負荷により起こるさまざまな症状です。
TCHにより歯の接触が続くことで、顔の周辺の筋の活動量が増えて、筋痛、筋疲労、さらに肩こりなどが発生することがあります。また、顎関節へ力が加わり続けることで、関節周辺の血液の循環が悪化し、摩擦が繰り返されることで、「顎の痛み」、「口が開かない」などの顎関節症の症状が発生することがあります。
問題なのがTCHを保有する本人が自覚していないケースが多いことです。本人が噛みしめ続けているという意識が無く歯の接触時間は長期間におよぶため、顎関節症が発症し、それを維持させてしまうことにつながります。
TCHの判定法
当院でもTCHの疑いがある患者様に「日中に噛みしめていないか?」という質問をすることがありますが、ほとんどの方が「やっていない…」と否定されます。
このように本人に自覚がないのが難しいところですが、TCHを判定するために2つ視診方法がありますのでご自身に当てはめてみてチェックしてはいかがでしょうか。
舌圧痕(ぜつあつこん)が無いか?
舌の左右(側面)にギザギザと歯の噛み跡が残っている状態。噛みしめが長期間になることでこのように舌に跡が残ります。また、歯並びが悪いために舌圧痕になることもあります。
頬粘膜圧痕(きょうねんまくあつこん)が無いか?
頬粘膜という頬(ほお)の内側の粘膜を上下の歯で噛み続けることにより「頬粘膜圧痕」という白い筋のような線が出ます。噛みしめが長期間になると白い筋はやや突起しくっきりとでます。
TCHを重くしないためにするべきこと
TCHが重くなると顎口腔系への負担が大きくなり顎関節症が発症する可能性が高くなります。そうならないためには、噛みしめ癖に早く気づいて、噛みしめを軽減するための生活改善が必要です。
もし、「顎の痛み」、「口が開かない」、「頭痛・筋痛」など顎関節症の症状があるようなら、症状を悪化させないために速やかに顎関節症の専門クリニックに行きカウンセリングを受けることが重要です。
TCHに早く気づく
TCHは無意識におこなうケースが多いのはすでに延べましたが、症状を重くしないためにはできるだけ早くご自身の「歯の接触癖」に気づかなくてはなりません。日常生活の中で以下のような症状がいくつか重なるようならTCHを疑う必要があります。
【TCHの危険信号】
- 疲労感を強く感じる
- 不眠が続いている
- 頭痛がする
- 肩がこる
- ストレスを感じる
- 抑うつ傾向がある
- 歯の接触時に筋肉の疲労感を感じる
- 夕方になると顎口腔に違和感や痛みがでる
THCを改善するポイント
TCHをするシーンは人それぞれ違いますが、まずはご自身がどのような状況で歯を接触させているのかを理解する必要があります。そして、そのような生活シーンの場では「リラックスを心がける」、「意識して口を開ける」など歯を接触させないための生活改善が求められます。
例えば、日常生活で目に入りやすい場所に「リマインダー」というTCHを思い出させるためのキーワード(「リラックス」、「歯を離そう」etc)を書いた張り紙をはるのも有効な方法です。
【TCHの改善ポイント】
- 緊張時、集中時にリラックスを心がける
- 歯を接触させないように意識する
- うつむいた姿勢を長時間取らない
- うつ伏せで読書をしない
- 頬杖をつかない
- リマインダーとなる張り紙をはる
TCHと顎関節症は専門クリニックで診断すること
このようにTCHは、まず症状を自覚して自ら生活改善をおこなうことにより症状が良くなるケースもあります。
しかし、すでに顎口腔系に「違和感がある」、「痛みを感じる」というようなTCHが重いケースや、「顎関節に雑音がする」、「疼痛が続く」など顎関節症が悪化している場合には、顎関節症治療の専門クリニックに相談してカウンセリングを受けるのが適切な対応方法です。
また、気をつけていただきたいのが、TCHや顎関節症の専門知識を持たない医院への通院です。誤った処置によりさらに症状が悪化するケースもありますので注意が必要です。
新宿デンタルオフィスの無料カウンセリング
新宿デンタルオフィスは顎関節症治療の専門クリニックとして、数多くの患者様に治療をおこなってきました。重いTCHや顎関節症の症状が見られる場合にはできるだけ早めにご相談ください。
当院では、予約制による初診カウンセリングを実施しており、患者様の歯列・噛み合わせ。顎関節症の状況をご確認し、最適な治療法をご説明いたします。
一人ひとりの患者様の”歯科セルフ・ドクター”として適切な治療をサポートさせていただきますのでお気軽にご相談ください。