マウスピース矯正で顎関節症になった方へ|矯正と顎関節を同時に診る治療
マウスピース矯正で歯並びを整えたはずなのに、途中から顎に痛みや音、開けにくさを感じるようになったという方がいます。歯並びは順調に整っているように見えるのに、なぜ顎だけがつらくなるのか分からず、今の矯正を続けていいのか、どこに相談すればいいのか迷っている方も少なくありません。
この記事では、マウスピース矯正のあとに顎関節症のような症状が出ることがある背景と、矯正治療そのものを中断せずに顎の状態も一緒に診ていく考え方について解説します。今通っている歯科医院を否定するものではなく、噛み合わせや顎の位置という視点をあわせて持つことで、今後の治療の選び方を考える手がかりにしていただければと思います。
矯正中・矯正後に顎の痛みを感じて不安な方へ
マウスピース矯正は、透明で目立ちにくく取り外しもできることから、歯並びを整える方法として広く選ばれています。歯並びが少しずつ整っていく過程を実感できる一方で、治療の途中や終了後に、顎の痛みやこわばり、口を開けたときの音、噛みにくさといった症状が出てきたという声も聞かれます。
歯並びに関するトラブルであれば矯正を受けている歯科医院に相談しやすいものの、顎の痛みや違和感となると、これが矯正と関係あるものなのか、それとも別の原因によるものなのか、判断がつかずに様子を見てしまう方も多いようです。今の矯正を中断すべきなのか、このまま続けていいのか、誰に相談すればいいのかが分からないまま、不安だけが残っているという状態です。
あらかじめお伝えしておくと、マウスピース矯正を受けたすべての方に顎の不調が起こるわけではなく、また顎の不調のすべてが矯正に由来するとも限りません。顎の不調が続くときに何を手がかりに考えればよいのか、どのタイミングで相談を検討すればよいのかを、ご自身の状態を見つめ直すための一つの視点として読んでいただければと思います。
マウスピース矯正のあとに顎の不調が起こることがある背景
歯並びを整える治療は、歯を目標の位置まで少しずつ動かしていくという工程が中心になります。この工程自体は、多くのマウスピース矯正で共通して行われているものです。
一方で、下顎は上顎のように頭蓋骨に固定された骨ではなく、関節でつながって動く骨です。下顎がどの位置にあるかは、歯と歯がどのように噛み合っているかと密接に関わっており、噛み合わせが変化すれば、下顎の位置や動き方にも影響が及ぶことがあります。
歯並びだけを整えることを中心に治療計画を立てた場合、見た目の歯並びは整っても、その状態が本人にとって噛みやすく負担の少ない噛み合わせになっているとは限りません。噛み合わせや顎の位置を十分に確認しないまま歯だけを動かしていくと、顎関節や周囲の筋肉に普段とは異なる負担がかかり続け、それが痛みや違和感として表れる可能性があります。
これは、矯正を担当した歯科医院に問題があったということを意味するものではありません。歯並びを整えることを目的とした治療の中で、噛み合わせや顎の位置という視点があらかじめ十分に組み込まれていなかった場合に起こり得ることの一つとして捉えていただければと思います。
マウスピース矯正は取り外しができる分、装着時間の管理によって歯の動き方が変わりやすいという特徴もあります。装着時間が短くなったり、左右で装着状況に差が出たりすると、計画していた歯の動きと実際の動きにずれが生じ、それが噛み合わせのバランスに影響することも考えられます。歯の動き方そのものだけでなく、こうした管理の積み重ねが、結果として顎への負担につながる場合もあります。
矯正後に出やすい顎の症状と相談の目安
マウスピース矯正の途中や終了後に感じやすい顎の症状には、いくつかの傾向があります。
口を開け閉めするときの痛みや違和感
食事や会話で口を大きく開けたときに、顎関節のあたりに痛みや突っ張るような感覚が出ることがあります。
口を開け閉めするときの音
口を開閉する際に、カクカクという音やジャリジャリという音が鳴るようになったという声もあります。
口が開けにくい・開口量が減った
以前と比べて口が大きく開けにくくなった、あくびをするときに引っかかる感覚があるといった変化です。
噛み合わせの違和感・噛みにくさ
奥歯で噛んだときにどこか噛み合っていない感じがする、片側だけで噛んでいる気がするといった噛み合わせの違和感です。
首や肩のこり、頭痛をともなうケース
顎関節や周囲の筋肉の負担が続くことで、首や肩のこり、頭痛といった症状をあわせて感じる方もいます。
矯正中に一時的な歯の移動にともなう違和感が出ることは珍しくなく、数日から数週間で落ち着く場合もあります。マウスピースを新しいものに交換した直後や、歯が大きく動く時期に一時的な圧迫感が出るのも、よく聞かれる範囲の症状です。
一方で、症状が数週間以上続く場合や、徐々に強くなっている場合、日常生活に支障が出ている場合には、様子を見続けるのではなく、噛み合わせや顎の状態を診てもらえる歯科への相談を検討したほうがよい目安といえます。特に、開口量の減少や噛み合わせの違和感が矯正の進行とともに強くなっている場合は、歯の移動によって噛み合わせのバランスが変化している可能性があるため、早めに確認しておくと安心です。
歯並びは整ったのに顎がつらいと感じるのはなぜか
マウスピース矯正では、治療前にシミュレーション画像で歯並びの仕上がりを確認できることが多く、見た目の変化は分かりやすい指標になります。しかし、見た目としての歯並びと、機能としての噛み合わせや顎の位置は、必ずしも同じ物差しで測れるものではありません。
歯並びが整っているかどうかは、正面から見たときの歯の並び方や隙間の有無で判断しやすいものです。一方で、噛み合わせや顎の位置が本人にとって負担の少ない状態になっているかどうかは、見た目だけでは分かりにくく、噛んだときの力のかかり方や顎関節の動き方まで確認する必要があります。
そのため、歯並びという見た目の目標は達成できていても、噛み合わせや顎の位置という機能面の確認が十分でなかった場合、治療が終わってから顎の不調に気づくということが起こり得ます。歯並びがきれいになったのに顎がつらいという状態は、矯正が失敗したというよりも、見た目の歯並びと機能としての噛み合わせという、本来は別々に確認すべき二つの要素のうち、後者の確認が十分でなかった可能性がある、という整理で捉えることができます。
治療前のシミュレーション画像は、歯の位置がどのように変化していくかを示すものであり、噛み合わせの力のかかり方や顎関節の動きまでを表しているわけではありません。見た目の仕上がりに納得して治療を終えたあとに、噛んだときの違和感や顎の疲れやすさに気づくというケースがあるのは、確認していた指標と、実際に負担がかかる指標が異なっていたためと考えることができます。
矯正と顎関節を同時に診るという治療の考え方
顎の不調をともなうマウスピース矯正の相談では、歯並びだけでなく、噛み合わせや顎の位置をあわせて確認することが検討の出発点になります。具体的には、CTスキャンや咬合器を使って顎関節の状態や噛み合わせのバランスを調べ、現在の噛み合わせが顎にどのような負担をかけているのかを把握します。
検査の結果、噛み合わせや顎の位置に負担がかかっていると判断された場合には、歯を動かす治療とあわせて、顎の位置を整えるための装置を並行して使うという方法があります。当院では、夜間に装着する取り外し式の装置で顎の位置を整えながら、そのうえでマウスピース矯正による歯列の調整を進めるという、顎関節症治療の知見を活かした矯正の進め方を行っています。
歯並びを整える工程と、噛み合わせや顎の位置を整える工程を別々に進めるのではなく、あわせて診ながら治療計画を立てることで、歯並びが整った状態と、顎にとって負担の少ない噛み合わせの状態を、できるだけ近づけていくという考え方です。
治療の進め方は、症状の程度によっても変わります。顎の痛みが強く出ている場合は、まず顎関節や周囲の筋肉の負担を和らげることを優先し、症状が落ち着いてから歯並びの調整を再開するという順番を取ることもあります。一方で、痛みが比較的軽く、噛み合わせの違和感が中心である場合は、歯を動かす治療と並行して顎の位置を整えていくという進め方が検討されます。ただし、症状の程度や現在の歯並びの状態によって適した進め方は異なり、すべてのケースで同じ結果が得られるとは限りません。まずは検査を通じて、ご自身の噛み合わせと顎の状態を確認することが最初の一歩になります。
他院で矯正した方の相談・セカンド相談の流れ
現在他の歯科医院でマウスピース矯正を受けている方や、すでに矯正を終えた方からの、顎の不調に関するセカンド相談も受け付けています。今の矯正を担当している歯科医院を変えるかどうかを決める前の相談として利用いただくことも可能です。
セカンド相談では、まず現在の歯並びと噛み合わせの状態をCTスキャンや咬合器で確認し、顎関節や周囲の筋肉にどの程度の負担がかかっているのかを調べます。そのうえで、今の矯正を継続しながら顎の状態を整えていく方法が適しているのか、治療計画そのものを見直したほうがよいのかを、検査結果にもとづいて説明します。
他院で作成されたマウスピースやこれまでの治療経過の資料がある場合は、持参いただくことで、これまでの治療経過を踏まえた相談がしやすくなります。今の治療を否定することが目的ではなく、噛み合わせや顎の位置という視点をあわせて確認したうえで、今後の選択肢を一緒に考えることがセカンド相談の役割です。
相談の結果、今の矯正を継続しながら顎の状態を並行して整えていける場合もあれば、治療計画そのものの見直しが望ましいと判断される場合もあります。いずれの場合も、現在の担当医院での治療を一方的にやめることを前提とした相談ではなく、顎の状態を踏まえた上で今後どう進めるのがよいかを一緒に考える場として利用いただけます。
早めに相談したほうがよい症状
矯正中や矯正後の顎の違和感の多くは、時間をかけて徐々に強くなっていくものです。一方で、次のような症状がある場合は、噛み合わせ以外の原因が隠れている可能性もあるため、様子を見すぎずに早めに医療機関への相談を検討してください。
急に口が開かなくなった、または開けにくくなった
顎に強い痛みや腫れをともなう
顎の音とあわせて、しびれや麻痺のような感覚がある
食事や会話に支障が出るほど症状が強い
これらの症状は、噛み合わせだけでなく他の原因が関係している可能性もあります。自己判断で様子を見続けず、速やかに医療機関を受診してください。
よくある質問
矯正が原因で顎関節症のような症状が出ることはありますか
噛み合わせや顎の位置を十分に確認しないまま歯並びだけを整えた場合、顎関節や周囲の筋肉に負担がかかり、顎関節症のような症状につながる可能性があります。ただし、矯正を受けた方全員に起こるものではなく、顎の症状には矯正以外の原因が関わっている場合もあります。
今受けている矯正を中断したほうがいいですか
自己判断で中断するのではなく、まずは噛み合わせや顎の状態を検査したうえで、今の治療を続けながら顎の状態を整えていくのがよいのか、治療計画を見直したほうがよいのかを相談することをおすすめします。
他院で作ったマウスピースでも相談できますか
相談可能です。現在使用しているマウスピースやこれまでの治療経過の資料がある場合は、持参いただくと相談がスムーズです。
検査だけを受けることはできますか
検査のみのご相談も可能です。まずは現在の噛み合わせと顎の状態を確認したうえで、今後の進め方を一緒に考えることができます。
どのくらいの期間で症状が落ち着きますか
噛み合わせのずれの程度や顎の状態、矯正の進み具合によって個人差が大きく、一概にはお答えできません。検査を通じてご自身の状態を確認したうえで、見通しを相談していただくことをおすすめします。
マウスピース矯正のあとに顎の痛みや違和感が続いている方は、噛み合わせと顎の状態を検査したうえで、今後の治療の進め方を相談してみることをおすすめします。ご予約は当院の予約カレンダーより承っております。
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